第20話

 朝の通学電車で将則が見る光景は、ほぼ相変わらずだった。  正面にメガネくんがいて、その隣にはナチュラルメイクになった厚化粧OL。右斜め前には、空席があっても決して座らない老紳士と、彼に色目を使うチャパバア。たまに隣に座ってくる香水リー…

続きを読む

第21話

 花園出場を決めた決勝戦の翌日は、一ヶ月ぶりに練習のない完全なオフ――休日だった。夜に家族三人で、少しだけ高級な回転寿司へ外食すること以外には、特に何の予定もなかった。  将則は朝からずっと家の中でゴロゴロしていた。  …

続きを読む

第22話

 二学期の終業式の一週間ほど前から、メガネくんがあの電車に乗ってこなくなった。  六月の終り頃だったろうか、祐子に初めて話しかけた日の翌朝、将則がメガネくんの肩にポンっと手を置くと、彼はやさしく頷いてくれた。あの日以降、平日は毎朝、乗車…

続きを読む

第23話

 登録選手以外の部員で構成される三十名ほどの応援団に、三年生部員はいない。三年生は登録選手外であっても、最後の大会ではレギュラーたちとほぼ同じ行動をする。島汁は意外と人情派でもあるのだ。  三年生や登録選手が一人もいない応援団に、レギュ…

続きを読む

第24話

 試合当日。  スタンドの応援団の声量と勢いは、花園ラグビー場全体を呑み込むような凄まじいものだった。 「たったみっかけっ」 「うおぉ~~~いっ」 「たったみっかけっ」 「うおぉ~~~いっ」 「たったみっかけっ」 「う…

続きを読む

第25話

突然のメッセージすみません。 僕は広田清(ひろた きよし)と申します。 通学電車で(基本的に)いつも木薮さんの正面に座っていたメガネの高校生です。 ちなみに3年生なので、木薮さんの1学年上になります(笑) あ、馴れ馴れしく…

続きを読む

第26話

 同じ時刻、同じ車両、同じ座席。  電車で通学や通勤をしていると、毎朝だいたい同じ人間の顔を見ることになる。最初は言葉さえ交わしたことのない他人であっても、そのうち、知り合いになったり、親友になったり、そして、ときには恋人になることだっ…

続きを読む